アパートを売却する際の留意点
父(60歳で他界)、母(75歳)、長男(46歳)、次男(13歳)の家族構成でしたが、父が他界し、母の面倒は長男夫婦が見ていました。現金はあまりなく、実家の土地建物と築40年以上経過したアパートを1棟所有していました。アパートは4部屋中1部屋が賃貸中で、高齢者が入居しています。
母の死後、相続が発生し、長男と次男の話し合いの結果、実家の土地建物を長男、アパートを次男が相続することになりました。
話し合いの前に、次男は不動産会社に査定を依頼していましたが、場所を特定されるのを不安に思い、アパートに関する情報を伝えませんでした。周辺相場から算出された高額な提示額や、路線価・周辺相場が良いという長男の説明もあり、遺産分割で了承しました。しかし、遺産分割後にアパートの売却を試みると、問題が発生しました。
不動産業者によると、「アパートを高く売るには空室の改修工事(1部屋100万円×3部屋)や外壁塗装工事など、合計150万円が必要だ」と説明されました。また、対象地の土地が50坪あり、アパートがあるため、収益還元法での査定が行われることになりました。アパート1部屋の賃料が6万円ならば、年間の収入は288万円となります。利回り10%を適用すると、査定額は2880万円となります。結局、改修を行わず、1部屋を賃貸に出しつつ2200万円で売却できましたが、実家の約5000万円の評価とは大きく異なりました。これが遺産分割前の話とはまったく違う結果につながり、兄弟間の関係が悪化しました。
アパートやマンションなどの不動産は、査定方法が通常の一戸建てや土地とは異なることが重要です。査定には「原価法」と「収益還元法」の2つの方法があります。