遺言書を書く際には、「遺留分」について留意する必要があります。

遺言書が存在しない場合、相続人全員の同意がない限り、遺産の分割方法を決定することはできません。時には調停や審判が必要になるかもしれません。しかし、遺言書がある場合は基本的にはその内容に従い、遺産を分割することになります。これにより手続きが迅速化する傾向があります。

ただし、遺言書があっても「遺留分」と呼ばれる一定の権利が存在することに注意が必要です。この制度は、「家族の最低限の生活を保障するために一定の金額が相続できる権利」として設けられています。

重要な点が2つあります。まず、遺留分は「権利」であることです。例えば、遺言書に「長男は親不孝だったので、1円も相続させません」と記載されていたとします。この場合、長男が遺言書の内容を受け入れれば問題ありません。しかし、「そんなことはない、遺留分を主張する」と長男が主張した場合、最低限の遺留分を受け取る権利があります。遺留分は「権利」であり、その行使は当該の人に委ねられます。

次に、遺留分の保障額です。以下の図をご覧ください。遺留分は法定相続分の半分に相当します。例えば、配偶者と子供が相続人である場合、配偶者の法定相続分は2分の1なので、その半分の4分の1が遺留分となります。子供の法定相続分は2分の1で、それを子供の人数で割ることで遺留分が計算されます。従って、遺留分は法定相続分の半分であり、具体的な金額としては12分の1に相当します。

例えば、遺産が1億円で配偶者と子供3人が相続人の場合、配偶者の遺留分は2500万円、子供1人あたりは833万円に相当します。

加えて、「兄弟姉妹には遺留分が適用されない」ことも覚えておきましょう。これは亡くなった人と兄弟姉妹がいる場合に関係します。そのため、子供のいない夫婦においては、遺言書で「全財産を妻(夫)に相続させる」と記載されていても、兄弟姉妹からの相続請求には法的な効力はありません。

遺留分に関する考え方は複雑ですので、第2章で詳細に解説しますが、大事な基本は「遺言書があっても遺留分は変更できない」という点です。遺留分を侵害するような内容の遺言書は紛争の原因となる可能性がありますので、遺言書の作成には慎重を期しましょう。