「課税?非課税? 生前贈与の境界線を探る」

生前贈与が相続税対策に有効であることはよく知られていますが、そのしくみを理解した上で実行する人は少ないものです。贈与税は相続税を補完するための税金であり、財産の承継時に課税されるものであり、その性質は相続税と同じです。「贈与税は日本で最も高い税金」と誤解されることもありますが、実際には多くの方がその実態を把握していません。ここでは贈与税の基本から応用的な節税対策までを解説していきます。

年間110万円までは非課税となる

贈与税は無償で財産を受け取った際に課税されるものですが、年間110万円までは非課税とされています。この110万円の枠組みは、受け取った金額を基準に考えます。例えば、2021年に父から110万円、母から110万円を受け取った場合、受け取った金額の合計が220万円となり、110万円を超える分について贈与税が課されます。

しかし、父から長男に110万円、長女に110万円というように贈与された場合、それぞれの受け取り額が110万円以下に収まるため、長男も長女も贈与税は発生しません。また、一般的な誤解ですが、生前贈与は配偶者や子供以外にも行うことができます。例えば、孫や子供の配偶者(婿や嫁)、内縁のパートナーや友人、知人にも贈与することが可能です。

期間は1年間であり、2021年1月1日から12月31日までに受け取った金額が110万円を超えた場合、翌年(2022年)の2月1日から3月15日までに、贈与を受けた人が贈与税の申告と納税を行わなければなりません(贈与した人が申告するわけではありません)。所得税の確定申告とは別物であり、贈与税と所得税は異なるものです。よくある疑問として、「贈与を受けた次の年に、社会保険料や住民税、医療費の負担が増えるのか」という質問がありますが、その答えは「いいえ」です。贈与を受けた金額が大きくても、社会保険料や医療費の負担は絶対に増えませんのでご安心ください。また、勤め先に贈与を受けたことが漏れることはありません。

税務署への申告漏れはリスクが高い

一部の方々は「110万円を超える贈与を受けても、税務署に気づかれないのでは?」と考えるかもしれませんが、この考え方は危険です。贈与税の無申告が問題となるのは贈与時ではなく、贈与をした人が亡くなり相続税の申告がある時です。税務調査の際には過去10年分の預金通帳の入出金履歴が詳細に調査されるため、そこで問題が露呈します。