現物不動産投資と事業収支計画

1. 収支計画

不動産投資においては、資金計画と経営方法が収支に大きな影響を与えます。利益が確定するまで長期的な事業となるため、事前のシミュレーションが欠かせません。収支計画とは、投下する資本に対してどれだけの収益を上げられるかを予測することです。採算性は、投下資本、収益、および費用のバランスで決定されるため、毎期の収支を予測することが事業収支計画で最も重要です。投下資本に関しては、事業開始に必要な資金とその調達方法を入念に計画する必要があります。これらを確定または推定する条件を整えることが、事業収支計画作成の第一歩となります。

2. 事業収支計画に必要な項目

収支計画では、支出を伴わない費用である減価償却費を考慮する必要があります。

  • (1) 収入項目賃料や駐車場料など、主な収入項目を設定し予測します。具体的には、地代、家賃、敷金(返還不要)、礼金、保証金(返還不要)、更新料などがあります。
  • (2) 支出項目事業を行うにあたって予測される支出は以下の通りです。
    • 公租公課:固定資産税、都市計画税など。
    • 維持修繕費:建物の経済的価値を維持するための費用。大規模修繕などライフサイクルコストを考慮し、収支計画上は一定額を費用計上することが一般的です。
    • 給料等:賃貸用不動産の管理等に従事した者に支払う給料。ただし、生計を一にする親族に支払う給与については、事業的規模で行われているなど一定の要件を満たす場合に限り必要経費となります。
    • 損害保険料:火災保険料、地震保険料など。
    • 支払利息:土地や建物の借入金の利子。
    • 地代・家賃:借地上の建物を賃貸したり、建物を転貸する場合の地代・家賃。ただし、生計を一にする親族に支払う地代・家賃は、原則として所得金額計算の必要経費になりません。
    • その他:広告宣伝費、登録免許税、不動産取得税など。
    • 借入金の元金返済額:借入金の元金返済部分は税法上、必要経費とすることができません。つまり、「費用にならない支出」であり、収支計算にのみ関係します。
  • (3) 剰余金剰余金とは、不動産投資により最終的に手元に残る現預金額です。事業を行わない場合と比較して、どの程度の手取収入があるかを判断します。税引前の剰余金を考慮する場合もあり、剰余金がマイナスの場合は資金不足となるため、他の所得や短期借入で補うことも検討します。