債務相続の理解
債務分割の原則
相続人は被相続人の財産だけでなく、債務も相続の発生の瞬間に引き継ぎます。相続人が複数いる場合、相続財産は共同相続人の共有財産となるため、債務も全員が共有して引き継ぎます。法的には、債務は遺産分割をする必要はありませんが、実際には相続人の間で財産の分割と一緒に債務も分割されることがあります。
ケーススタディ (財産分割)
相続人のAとBは、被相続人甲が遺した財産を相続しました。AはAマンション(時価2.8億円)と、甲の借入金を相続し、BはBマンション(時価2.5億円)と、同じく借入金を相続しました。
- Aが相続した財産と債務:
- Aマンション
- 土地時価:2.0億円
- 建物時価:0.8億円
- 借入金などの債務:▲1.2億円
- 純相続財産:1.6億円
- Aマンション
- Bが相続した財産と債務:
- Bマンション
- 土地時価:1.5億円
- 建物時価:1.0億円
- 借入金などの債務:▲0.9億円
- 純相続財産:1.6億円
- Bマンション
この場合、AとBは互いに引き継いだ純相続財産が1.6億円ずつであり、お互いに納得して相続しました。しかし、注意すべき点が2つあります。
- 債務には必ず債権者がいる点:金融機関などの債権者は債務者に対して相続を考慮して資金を貸し出しています。債務者の相続人は連帯保証人に名を連ねている場合が多く、連帯保証人なら債務を引き継ぐ必要があります。連帯保証人でなくても債務者の相続人は法定相続分に応じて債務を引き継ぐことになります。したがって、相続人の間で債務を分割しても債権者には対抗できません。
- 保証債務の注意:保証契約には、貸金の根保証契約、賃貸借契約の保証契約、身元保証などがあり、これらは債務相続の対象になります。対策として、保証を外すことや、主たる債務者の状況を確認し、書面に残すことが重要です。これらの債務は相続発生後に問題となる可能性があるため、相続発生前に対策を講じることが大切です。