不動産の譲渡と税金

特定の居住用財産の買換え特例

2025年12月31日までに居住用財産を譲渡し、一定期間内に新たな居住用財産を買い換えることで、譲渡益はなかったものとし、課税を将来へ繰り延べることができる特例です。これにより、買換資産の取得費は実際の取得費ではなく、譲渡資産の取得費を引き継ぎますが、取得日は引き継がず、実際の取得日が取得時期となります。

1. 適用要件

(1) 譲渡資産の要件

  1. 所有期間が10年超(譲渡した年の1月1日時点)
  2. 居住期間が10年以上
  3. 譲渡対価の額が1億円以下

(2) 買換資産の要件

  1. 面積要件
    • 建物:床面積50m²以上
    • 土地:500m²以下
  2. 省エネ基準
    • 2024年1月1日以降に建築確認を受ける住宅(登記簿上の建築日付が同年6月30日以前のものを除く)は、一定の省エネ基準を満たす必要があります。
  3. 既存(中古)住宅の要件
    • 築25年以内または地震に対する安全性に係る基準等に適合する既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入していることが証明されたもの。ただし、いずれの要件も満たさない非耐火既存住宅を取得し、④の取得期限までに改修等を行って前記の要件に適合すれば認められます。
  4. 取得期限
    • 譲渡した年の前年1月1日から譲渡した年の翌年12月31日までに取得する。
  5. 居住開始期限
    • 譲渡した年の翌年末(譲渡年の翌年中に取得したものは翌々年末)までに居住する。

2. 特例の効果

譲渡資産を譲渡した価額以上の金額で買換資産を取得した場合、譲渡はなかったものとされ、課税は将来に100%繰り延べられます。一方、譲渡資産を譲渡した価額未満の金額で買換資産を取得した場合、その差額部分についてのみ譲渡があったものとされ、求めた譲渡所得金額が課税の対象となります。

  1. 譲渡資産の価額 = 買換資産の価額:譲渡がなかったものとされる。
  2. 譲渡資産の価額 > 買換資産の価額:差額部分(譲渡価額-買換価額)についてのみ譲渡があったものとされる。

3. 長期譲渡所得金額の税額の計算

譲渡資産の価額が買換資産の価額を超える場合、次のように税額を計算します。

  1. 譲渡収入金額 = 譲渡価額-買換価額
  2. 取得費と譲渡費用の合計額 =(譲渡資産の取得費 + 譲渡費用)× 譲渡収入金額 / 譲渡価額
  3. 長期譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - 取得費と譲渡費用の合計額
  4. 税額
    • 所得税の額 = 長期譲渡所得金額 × 15%
    • 住民税の額 = 長期譲渡所得金額 × 5%

4. 主な他の特例との関係・税額の比較

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除と軽減税率の特例は重複適用が可能ですが、特定の居住用財産の買換え特例とは重複適用できません。従って、買い換えを行う際には、どちらの特例を適用するかを比較して判断する必要があります。


この特例を活用することで、不動産譲渡時の税負担を大幅に軽減できますが、適用要件を満たすためには事前の準備が重要です。ぜひ専門家に相談して最適な選択を行ってください。