不動産の譲渡と税金

不動産の譲渡に関する税金は複雑ですが、正確な知識を持つことが重要です。ここでは、相続税の取得費加算の特例を含め、譲渡所得の計算方法について解説します。

1. 取得費の計算

取得費は、譲渡所得の計算上、譲渡した資産の取得に要した金額から一定の費用を差し引いて求めます。具体的な計算方法は以下の通りです。

(1) 計算方法 取得費は次の式で計算されます。

取得費=譲渡した資産の取得に要した金額+その後の設備費・改良費等−償却費相当額取得費 = 譲渡した資産の取得に要した金額 + その後の設備費・改良費等 - 償却費相当額取得費=譲渡した資産の取得に要した金額+その後の設備費・改良費等−償却費相当額

※ 土地の場合、減価しないため償却費相当額は控除しません。

(2) 建物の取得費 建物の取得費は、業務用資産と非業務用資産(自宅等)で異なります。

業務用資産 業務用資産の償却費相当額は、減価償却費の累計額です。従って、業務用資産の取得費は未償却残高で計算されます。

非業務用資産(自宅等) 自宅等の非業務用資産は次の式で計算します。

取得費=取得に要した費用等−償却費相当額取得費 = 取得に要した費用等 - 償却費相当額取得費=取得に要した費用等−償却費相当額

償却費相当額は以下の式で求めます。

償却費相当額=取得に要した費用等×0.9×旧定額法の償却率×経過年数償却費相当額 = 取得に要した費用等 \times 0.9 \times 旧定額法の償却率 \times 経過年数償却費相当額=取得に要した費用等×0.9×旧定額法の償却率×経過年数

  • 0.9(残価率10%)は旧定額法によるもの
  • 譲渡資産の耐用年数の1.5倍の年数に応じた償却率
  • 1年未満の端数は、6ヶ月以上の場合は1年とし、6ヶ月未満の場合は切り捨てます。

計算例 2009年10月15日に取得(新築)した自宅建物(非業務用・木造:取得価額30,000千円)を2021年12月8日に譲渡した場合の取得費の計算例は以下の通りです。

償却費相当額:
30,000千円×0.9×0.031×12年=10,044千円30,000千円 \times 0.9 \times 0.031 \times 12年 = 10,044千円30,000千円×0.9×0.031×12年=10,044千円

取得費:
30,000千円−10,044千円=19,956千円30,000千円 - 10,044千円 = 19,956千円30,000千円−10,044千円=19,956千円

(3) 相続や贈与で取得した場合の取得費 被相続人や贈与者が取得したときの取得費を引き継ぎ、取得した際の登録免許税、不動産取得税、登記手数料等も取得費に含まれます。

2. 概算取得費

取得費が不明な場合、譲渡収入金額の5%を取得費とすることができます。これを概算取得費といいます。概算取得費が実際の取得費より多い場合でも適用できます。また、建物の取得費は実際の取得費で、土地の取得費を概算取得費とすることも可能です。

3. 相続税の取得費加算の特例

相続(または遺贈)により取得した資産を、相続税を納めた者が譲渡する場合、譲渡所得の計算上、取得費に支払った相続税額の一部を加算できる特例があります。ただし、この特例は譲渡収入金額から取得費と譲渡費用を控除した残額を限度とします。

(1) 譲渡する期間 相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡する必要があります。

(2) 本来の取得費に加算できる金額 取得費加算額は以下の式で求めます。

取得費加算額=その者の相続税額×譲渡資産の相続税の課税価格/その者の相続税の課税価格(債務控除前)取得費加算額 = その者の相続税額 \times 譲渡資産の相続税の課税価格 / その者の相続税の課税価格(債務控除前)取得費加算額=その者の相続税額×譲渡資産の相続税の課税価格/その者の相続税の課税価格(債務控除前)

この特例を活用することで、譲渡所得の金額を減らし、税負担を軽減することが可能です。


これらの計算方法や特例を理解し、正確に適用することで、不動産の譲渡に伴う税負担を最小限に抑えることができます。専門家の助けを借りることも検討し、適切な対応を行いましょう。