不動産取引に関する法律
1. 住宅の品質確保の促進等に関する法律
この法律は、住宅の性能に関する表示基準およびこれに基づく評価制度を設けることにより、消費者が新築住宅の性能を比較しやすくし、住宅に係る紛争処理体制の整備や瑕疵担保責任を定めることで、住宅の品質確保の促進を目的としています。
(1) 住宅性能表示制度
住宅性能表示制度は、住宅の性能に関して「日本住宅性能表示基準」と「評価方法基準」の共通ルールを設け、登録住宅性能評価機関が評価することで、消費者が住宅の性能を相互に比較できるようにした制度です。新築住宅・既存住宅のいずれにも適用されますが、これは請負人または売主の任意です。近年では差別化を図るためにこの制度を適用する住宅が増えています。
① 新築住宅
新築住宅については、構造の安定、火災時の安全、劣化の軽減、維持管理、温熱環境・エネルギー消費量、空気環境、光・視環境、音環境、高齢者等への配慮、防犯の10分野33項目について評価・表示されます。
② 既存住宅
既存住宅については、上記の10分野のうち音環境以外の9分野に、現況検査によって認められる劣化状況などを加えた10分野について性能が表示されます。なお、既存住宅の場合、新築時に建設住宅性能評価書の交付を受けていないものについては評価項目が適用されないこともあります。
③ 性能評価書
性能評価は共通ルールに基づき、客観的な事項は等級や数値で表示され、主観的な判断が難しい事項は対象外です。性能評価書は国土交通大臣に登録された第三者機関である登録住宅性能評価機関が交付します。新築住宅については設計段階で「設計住宅性能評価書」、施工・完成段階では「建設住宅性能評価書」が交付されます。既存住宅についても「建設住宅性能評価書」が交付されます。
新築住宅の請負契約や完成前の売買契約に「設計住宅性能評価書」またはその写しを添付した場合、完成後の売買契約に「建設住宅性能評価書」またはその写しを添付した場合、請負人または売主はその基準を満たした住宅を引き渡す約束をしたものとみなされます。
(2) 紛争処理機関
住宅に関する紛争が生じた場合、建設住宅性能評価書が交付されている住宅や住宅瑕疵担保責任保険が付保されている住宅を取得した者は、全国の弁護士会に設置された「指定住宅紛争処理機関」による第三者性の高い裁判外のあっせん・調停・仲裁を受けることができます。この制度は建設住宅性能評価書の交付にメリットを与え、住宅性能表示制度の普及を目的としています。
(3) 新築住宅の請負契約または売買契約における瑕疵担保責任の特例
新築住宅の購入者は、引き渡しから10年以内に構造耐力上主要な部分等に瑕疵を発見した場合、請負人または売主に対して「債務不履行による損害賠償請求」、「催告による解除」、「催告によらない解除」、「追完請求」、「代金減額請求」を求めることができます。これは請負人または売主の瑕疵担保責任を強化し、欠陥住宅を防止することを目的としています。
なお、この法律における新築住宅とは、築後1年を経過していない未入居の住宅を指します。構造耐力上主要な部分等とは、「基礎、柱や梁などの構造躯体」と「雨水の浸入を防止する部分(屋根、外壁の仕上げ・下地など)」です。特約により構造耐力上主要な部分等以外も含めて責任期間を最大20年まで延長できますが、主要構造部分の瑕疵担保責任の期間を10年より短くすることはできません。