定期借地権の保証金に対する課税について

定期借地権の設定時における保証金の扱い

定期借地権の設定に際して、借地権者(賃借人)が借地権設定者(賃貸人)に支払う保証金(一時金)は、将来的に借地権者に返還されるべきものであり、借地期間中には賃貸人に経済的利益が生じることがあります。また、地代の前払いとして支払われる一時金(前払賃料)についても特定の取り扱いが定められています。

1. 保証金の経済的利益に対する課税

保証金として預かったお金は、地主にとって無利息で自由に使える資金となります。このため、運用方法により経済的利益が発生し、その利益に対して所得税が課税されることがあります。

(1) 業務に係る資金として使用した場合

保証金を不動産所得等の業務用資金や業務用の資産取得資金に充てた場合、その経済的利益の額を各年分の不動産所得の収入金額に算入し、同額を必要経費に算入します。これにより、損益には影響しません。

(2) 預貯金等で運用した場合

預貯金や公社債、指定金銭信託、貸付信託等で運用した場合、運用結果として生じる利息等に対して所得税が課税されます。このため、保証金の経済的利益の額の計算は不要です。

(3) 自家消費した場合

保証金を自宅の建築費用や相続税の納税資金に充てた場合、その経済的利益の額を各年分の不動産所得の収入金額に算入します。これにより、所得が増加し所得税の課税対象となります。

(4) 適正な利率

保証金の経済的利益の額は、保証金に適正な利率を乗じて計算されます。適正な利率は国税庁により毎年公表され、利子税とは異なります。

2. 地代の一括前払である一時金の取り扱い

定期借地権の設定時に受け取る一時金が地代の一括前払である場合、借地権者は「前払費用」とし、地主は「前受収益」として扱います。契約期間の経過に応じて、それぞれ必要経費または収入として計上します。この一時金が地代の一括前払であることが契約書上明らかであり、実態も前払賃料である場合に限られます。

中途解約時には、前払賃料の未経過分を地主から借地人に返還しなければなりません(違約金の定めをすることは可能ですが、前払賃料の未経過分を違約金とみなすことはできません)。


このように、定期借地権の保証金や一時金に対する税務上の取り扱いにはさまざまなルールがあります。適正に処理することで、無駄な税負担を避けることが可能です。