養子縁組の相続税対策:効果と注意点

養子縁組の効果

養子縁組をすると、相続人の数が増えます。相続税は相続人数が多ければ多いほど減少するため、相続税対策に効果的です。手続きも役所に簡単な書類を提出するだけで完了します。早ければ1日で終わるため、即効性のある相続税対策として注目されています。

例えば、財産1億円で配偶者がいない場合、養子縁組前の相続税は1220万円ですが、養子縁組後は770万円に減少します。相続人が増えることで基礎控除が増えるのはもちろんですが、適用される相続税率が緩和される点が大きな理由です。財産1億円の場合、1人の相続人だと最大の税率が適用されますが、2人になれば最大税率は15%に抑えられます。

注意すべき点

ただし、相続税対策として安易に養子縁組をするのは避けるべきです。養子縁組は副作用が多く、相続トラブルを招くことがあります。例えば、長男と次男の2人兄弟がいて、両親が長男の子(孫)だけを養子縁組したとします。養子縁組をしなければ、長男と次男の法定相続分はそれぞれ2分の1ですが、養子縁組によりそれぞれの相続分は3分の1に減少します。

長男からすれば自分の子が相続できるため得するように見えますが、次男からすると相続できる遺産が減るため大きな損失です。実際、次男側から「養子縁組は両親の真意ではなく、長男が勝手に行ったもので無効だ」という訴えが多いです。養子縁組の有効性は「当事者間に縁組の意思があったかどうか」が重要で、有効とされるケースも無効とされるケースも存在します。2017年1月以降、相続税節税目的で行われた養子縁組でも、意思が存在した場合には有効と判決される最高裁の事例もあります。