住宅の価値観が変わりつつある

自民党の中古住宅市場活性化小委員会は2015年5月、「中古住宅市場活性化に向けた8つの提言」を発表しました。その中で特筆すべきは、提言4の「担保評価を含む『20年で一律価値ゼロ』とみなす市場慣行の抜本的改善」です。概要は以下の通りです。

現在の住宅価格評価の慣行は、木造住宅については築20〜25年で価値がゼロと見なす傾向があり、リフォームをしてもその価値向上が反映されていません。

しかし、耐久性の高い住宅や、適切なリフォームが施された住宅は長期間使用できる可能性があります。

個々の住宅の品質やメンテナンス状況に基づいた的確な建物評価が行われ、その評価が担保評価にも反映されるよう、建物評価の慣行を改善する必要があります。

適切な修繕が行われれば、基礎や骨組みの機能が失われていない限り、住宅の使用価値は回復・向上するというのがこの提言の考え方です。

これを人間の例えで説明すれば簡単です。食事に気を使わず、毎日お酒を飲み、運動をせずに過ごす40歳男性と、バランスの取れた食事をし、定期的に運動を行う40歳男性を比較すると、後者の方が明らかに健康状態が高いと言えます。

この違いは定期検診の結果として現れるでしょう。建物も同じで、築年数が同じでも、その健康状態は異なります。その健康状態を明確にして価値を証明すれば、建物の価値に見合った価格が付けられるでしょう。これが中古住宅価格の本来の姿です。

前述の自民党の提言は、2014年3月に公表された「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」に沿った内容ですが、2015年以降、この指針を受け、住宅の性能やリフォームの状況などを正確に反映した価格査定が行われるための「既存住宅価格査定マニュアル」(不動産流通推進センター発行)が順次改訂されています。

このマニュアルが本格的に不動産業界で活用されるのはまだ先かもしれませんが、国が中古住宅の活性化を目指していることは確かです。中古住宅の取引量は年々増加しています。購入者も根拠のある価格設定がなされた中古住宅ならば、納得して購入する傾向にあります。こうした時代の変化が進行しています。